palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

あわや捜索未満 娘と私の二日間

「風邪で学校を休んだのなら、ゆっくり休めばいいよ。」届かないこちらの想い

金曜日に娘は小学校を欠席した。
先週から喉の痛みを訴えていたのが発熱に変わり、
学校を休む日が続いた今週1週間。
木曜日は早退をしたが、帰宅後しんどそうで
本人の希望と親の判断で、金曜日に再び欠席と
したのだ。
それなのに、諍いが発生してしまった。

親も学校の先生も、誰も彼女に無理をして登校
するようにとは考えてもいないし、口に出しても
いない。
けれど彼女の頭のなかでは「登校しないと。」と
いう思いが膨らみ制御できなくなったらしい。
何度も「休んでしまった…。」と呟きあせる。
そこで私が
「それなら今から学校に行こうか。」
と声をかけると、
「恥ずかしいから嫌だ。まだだるいし。」
と応える。
「そんなときは、休めばいいんだよ。」
そういうと納得したような気分にはなるようだが、
またしても「でも…。」といいだす。
これを朝から少なくとも8回は繰り返した。
最後に午後1時半過ぎに「学校…。」と
呟いたときには、もうこちらの神経がもたなく
「それなら今から着替えて学校にいきなさぁい!!」
と、私のなかで何かがプツンときれてしまった。

娘は制服に着替える途中の段階のポロシャツと
紺色のショートパンツ姿で、止める間もなく
玄関を飛びだしていった。

もう少しで捜索となる寸前に娘が帰宅する

マンションの外階段、ロビー、駐車場と思いつく範囲を
探しながら、鍵を持たず家を飛びだした娘が戻っている
かもしれないと、何度も玄関ドアを開けて靴があるかを
確認する。
行き違いを考えると遠くまで探しにいくこともためらい、
こんなときに限って、管理人さんは建物を巡回中で不在だ。
わりと大袈裟にツライ、サイアクと口にする娘がもし
思い詰めてなにかよからぬことを考えたら…とまで考えが
およぶと、マンションの外階段から空を眺めながら、意識が
しんと冴えてくる。
そして私が切羽詰まっていても、空は無駄に青く晴れていて
世間はもとどおり機能している。
(学校に向かっているかもしれない、こんなに寒い日に薄着で。)
ひとまず室内へ戻ると、担任の先生からの留守電が入っている。
私は以前、他の子どもがいなくなった事例を頭に思い浮かべ、
仕方がないと観念して学校へ電話をかけた。
捜索となることを覚悟して状況を話すと、先生は静かな
落ち着いた口調で
「…そうですか。」
とおっしゃる。
気が動転した保護者に対して落ち着いてもらうためなのだろうか、
そのゆっくりした先生の口調が緊迫感を感じさせ、こわい。
現実がゆらりと歪みそうな奇妙に穏やかな電話のやり取りに
耐えられないと思いだしたときに、マンションのインターフォンが
鳴り、受話器をそのままに確認すると娘の姿が画面に映っていた。
「戻りました!」
その後どう先生と会話を終わらせたかが記憶にない。

娘に、こういう場合学校と警察が生徒の捜索にあたること、
あなたはもう少しで捜索される寸前だったのだと低い声で
説明した。
「…えっ、そんなことされたらサイアクだ!」

もうここからは、川の濁流のように私から言葉が溢れて
止まらなくなった。

学校が心地よい場所でないと思い、できる範囲で先生と
手をうってきたこと。
好きな恐竜の漫画を図書館で予約して取り寄せてあげたでしょ。
志望する中学校を受験するから塾に通っているのはあなたの
意志ではないの?塾にいくのが嫌ならいつでも受験は
やめなさいといってるよね。
どうして私が片づけてあげた部屋がたった1日で竜巻にでも
あったようになるのか、何故教科書を子ども部屋で紛失するのか、
そうしてプリントを渡していないくせに渡したというのはヒトと
していかがなものか。
まだ小学生のくせに何かというと「忘れた。」「覚えていない。」
を連発して脳がどうかしてるんじゃないか、認知症は普通高齢から
なんですよ。
好き嫌いが激しすぎて、もう献立を考えるのにママは疲れてるの。

もうもう、咳で学校を休む娘をかわいそうに思えない。
それに加えて自分の子ども時代、親にどう扱われたかを思いだして
娘に対する歯がゆさと、自分の子ども時代の心の傷をうっかり再生
してしまい涙が止まらなくなった。
衣食住は完璧に整えてくれても子どもの心のケアは一切してくれない
母親を持ち、自分が級友をかばってイジメにあったときも見殺しに
され悲しかった私。
一方娘は担任の先生や私たち親、祖母たちにいろいろ心遣いを
されている。それなのに彼女はそれを当たり前と思っているのか。
当たり前と思えることがいい、そう平常心の私は感じている。
でも娘の級友の幼稚な意地悪に先々週は学校を休み、塾に行きたく
ないと先週ごねられ、今度は風邪で休んだら終わりのない問答をされ、
仕事の予定もキャンセルして娘と向かい合っていると、とても辛く
娘の立場にたち言葉を飲み込むことができなかった。

何故、身体を休めてと考えた愛情からでた行為が裏目にでるのか。

声を使う仕事もしていくのだから、身体は商売道具、喉を大切にしない
と。私のなかの理性はささやいたけれど、かまうものかと感じる私が
大声で娘に泣き喚いた。
いつもは娘の大声を注意していたが、立場が逆転する。
地団太をふんで、たぶんジャンプして身振りをまじえて熱弁する私は
娘をおびえさせたが、しったことではない。
ママはいつも悩みがなさそうでいいねと娘にはいわれてきたけれど、
いちいち深刻な顔を見せないだけで、笑顔の裏であなたのことを
心配したり胸を痛めたりしてきたの。

金曜日は何もかも放棄して、ふて寝をした。
ひとりで2、3年外国で働いて暮らしたい、もうだれも知らない場所で
生きていきたいと本気で考えながら疲れきって眠った。

「このことが私の転機になるかもしれないな。」前向きな娘に気をとりなおす

土曜日は塾のテストがあったが、咳が他の生徒の迷惑になる
レベルだったので娘に振り替えを電話で告げるようにいい、
私は遅寝した。

11時ころ起きて何気なくスマホを見ると、元夫から昨日娘の
騒動の最中に電話がかかり邪険にしたことを怒ったメールが
何本も入っており、日頃彼には感謝しているのに
(肝っ玉の小さいオトコだ。)
とムラムラと怒りが湧きあがり、電話で久方ぶりに夫婦でも
ないのに喧嘩をしてしまった。
普段は娘の前で彼を褒めることはあれ、けなすことはしない。
でもお構いなしに元夫にも怒鳴った。

それを聞いていた娘に、この喧嘩はもとはといえば、あなたが
学校を休んだのに行く行かないでぐずぐずいったことが発端
なのだと丁寧に説明をした。
私の怒りはまだ静かに燃えている。

そのまま2時を過ぎると、昼ごはんの支度をしない私に娘が
買い出しにいくと自分からいいだしてくれた。
適当なパンを頼み、そのままぼんやりとお任せしてみる。
なるべく与えないようにしていたのに、彼女の好物となった
カップうどんやジャンクフードを調達して娘は元気に帰ってきた。

その後子ども部屋を片づけるのを補助しているともう夕方に突入。
7時から娘は宇宙のテレビ番組に、歓声をあげながら見入っている。
それから久しぶりにお風呂に一緒に入り、娘に質問をしてみた。
「どうして昨日はあんなことを言ったのかな?3つから選んでね。」
「1、ママが優しいから好きなことをいっている
 2、ママが楽しそうだからかまわないだろうと思ってキレている
 3、その他…どれ。」
娘は照れ臭そうににやにやしながら即答した。
「1番だよ!本当は片づけ方もわかるし甘えてるんだよ。」
やはりそうか、何ともいえない気持ちで私は納得をした。

お風呂上りに、ニンジンとリンゴをすりつぶしたジュース未満
のものを野菜嫌いの娘のビタミン補給にと作り、一緒に食べる。
「私が多いほうのお皿ね。」
と娘は大目によそったそれをモリモリ食する。
「よぉし、明日は絶対6時に起きるから、私が文句いっても絶対
起こしてよ。」
塾の宿題に取り組むそうだ。
「なんか、こういうことが起きてかえっていいというか…
このことが私の転機になりそうな気がするんだ。」

あなたの転機にいったい何人の大人が巻き込まれたかわかっているのか。

もうそうたしなめる余力は私にはない。
人生は悲劇のようにみえて、やっぱり喜劇だ。