palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

小学校の担任の先生との面談で力が湧く

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「変な親だと思われているだろう」覚悟して小学校に出向く

夕方の小学校訪問は、密かな緊張が付きまとう。
昼間の授業参観などとは違い、子ども達の下校後に
親が担任のもとへ出向くそれは、「相談」に
決まっているからだ。

傘を持ってくればよかったと後悔をしながら、
小学校のインターフォンを押し、娘の氏名と学年、
保護者であることを名乗り持参したスリッパに履き
替え職員室に向かう。
職員質の前には担任の先生がスタンバイされていて、
「今日は校長がいないから、校長室が使えるんですよ。」
と笑顔でおっしゃった。
何となく二人でにこりと笑みを交わし、広々としたソファに
ゆったりと腰掛ける。

最近の娘の学校での授業中の様子、課外活動や運営委員会の
あいさつ運動への取り組みなどをざっと先生がお話しして
くださり、話題は娘の中学校のことに移る。
「あの、前に電話で中学校は県外も考えられてるとお聞き
しましたが、何でですか?」
この質問をされることは覚悟してきた。電話で少しお話しした
ときには「はぁ。」とおっしゃっていたので、さぞかし
素っ頓狂な親だと思われたに違いないとも覚悟してきた。
だから正直な気持ちを伝える。
「はい、娘はどうしても校区の中学校には行かないと言い
ますし、隣の校区の中学に入って陰口を叩かれるのが嫌だと
言います。娘は生き物、魚や昆虫が好きなんです。だからもし
受験がうまくいかなかったら、分校みたいな中学校を探して
そちらへ行かせてあげたいと考えています。」

「お母さんはこの県から出てもいいんですか?」

「はい、転居の可能性も考えて実は書く仕事もしています。
娘がテレビで島の中学校や高校を見まして、すごく行きたい!
と言いますし、町営住宅か何か借りて今住むマンションは賃貸
にだして、私はいざとなったらコンビニでも何でも働くつもり
だから、何とかなると思うんです。」
・・・変人認定をされるだろうか。一息に話しながら先生の
顔を窺っていると、先生はどんどん笑顔になっていかれた。

「レールを外れてもいいんじゃないか」身にしみる先生からの言葉

「僕も、何とかなると思いますよ。人ってこうしなくちゃ
いけない、すべきというレールにのっとって生きてますよね、
そこから外れると不幸になるみたいなのも言われますよね。
そう言われてきませんでしたか?でもそんなことないんじゃ
ないかなと思うんですよ。近所がどうのとか、小さい枠に
おさまることもないと思います。」

保護者の間で大人気で、子どもたちのことを本気で
思ってくださる良い先生なのは、私も知っていた。
でも奥様も妹さんも教師をされていて、典型的な教職者像に
あてはまる先生が、そこまで柔軟な方とは見抜けなかった。
一気に心の距離が縮まっていく。

「私もレールから外れない人生を歩んでいたのでよく
わかります。今はもうレールから外れたので、近所が
どうこうなんかは気になりません。娘が心地よく学校で
過ごせることが大事です。」
こんなに本音を学校で話せたのは初めてだ。娘のこと
だけではなく、私の人生のことも抵抗なく話している
自分がいる。先生もご自分の人生のことをお話しして
くださり、娘の面談は大人同士の面談になっていく。

信頼できる先生からの「大丈夫」という言葉が保護者(私)にあたえる影響の大きさ

(この先生なら気持ちを伝えても、真っ直ぐに受け止めてもらえる。)
子どもの頃すりむいた膝を保健室で消毒してもらったように、
痛みをこらえる覚悟を決めて、先生に気持ちを委ねる。
同学年でほとんど親しい友達がいない娘が、中学校でも、
もしかしたら成人してからもひとりぼっちだったらと、私が
不安でいっぱいになってしまうことがあることを告白する。
いつでも平気なふりはしなくていい。
大人で保護者だって、迷うことも弱気になることもある。
こんな風に弱みを見せられる相手が存在することへの感謝を
先生に感じながら、私は神託を聞くかのように神妙な顔で
先生の言葉を待つ。

先生は先ほどと変わらず気さくに
「大丈夫ですよ。」と何度も力強く繰り返してくださった。
娘はそのままの娘で大丈夫。
人生に挑んで自活の道を模索している私がいて、彼女のため
にいざとなったら引っ越しすることを皆で考えているのだか
らともかく大丈夫と、満点のテスト結果を生徒に告げるように
先生は迷いなく、「大丈夫」とおっしゃる。

先生の言葉が心に沁みて、心が軽くなる。
子どもの悩みに関しては、親は雛を羽で包む親鳥のように
自分の中で内包しがちだ。
ただでさえ子どもが、そして親も傷ついているのに、心無い
ママ友や先生に傷口を広げられるような言葉をかけられる
こともあると、経験上知っているからだ。
この先生の前では、そんな心配は無用だ。
身体も心も固くしなくていい。

信頼して気持ちを委ねられる先生に、想いを正直に言葉にして
発することがこんなに救いになるなんて、面談の前には予想
できなかった。

先々月娘に意地悪をした級友の女子は、友人と喧嘩をして
危うい立場になっているという。
女子の世界の内戦は終わらない。
娘が安心して、心から楽しく思える学校生活は、卒業までに
かなわない可能性の方が高い。
それでもこの担任の先生に見守られて、卒業するまで娘が
彼女らしさを貫いて学校生活を続けられることは確実だ。

先生に電話が入り、面談は終了となる。
不思議なことに先生も私も面談前より元気になり、
大きく笑顔で別れのあいさつを互いに口にする。
12月の通知表渡しが次にあう機会だが、何かあれば
すぐに連絡をくださいとおっしゃる先生に、
私は小学生のように「はい。」と胸をはって返事をする。

小学校の玄関を開けると雨は止んでいた。
重苦しい話題の面談だったのに、感想は
「楽しかった。」だ。
月が綺麗。
気持ちが穏やかに凪いでいく。
さあ、塾に娘を運ばねば。
この瞬間も、この気持ちも、きっといい思い出に変わる。