palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

新しい風

f:id:palewhite:20140901225410j:plain

母から届いた宅配便

母から宅配便が届いた。
一か月半交流を絶ち、だんまりを決め込んでいた母と私。
もうすぐ娘の誕生日、例年なら「おめでとう」の電話があるけれど、
今年はどうするんだろう・・と、電話を受ける側なのに気を揉んでいた。

電話はなかったが、思いがけなく宅配便が届く。
何が入っているかドキドキしながら段ボールの箱のテープを乱暴にはがし
中を覗いてみる。
お菓子、ポケモンの雑誌、野菜の上に、封筒とデパートの積み立てお買いもの券。
「おめでとう」とメッセージのかかれた封筒には、プレゼントを買ってくださいとお金が
入れられていた。そしてお買いもの券は明らかに私用のプレゼント。

本当は一緒にバーゲンに行く予定だったのだ。
真剣にサンダルを吟味したり、シニア向けの服の罠にひっかかりそうな母をたしなめたり。
そのときに、このお買いもの券は使われるはずだった。
あとどのくらいこうやって二人でお出かけできるかと最近は考えるようになっていたのに、
今年の夏、私は母と会わずに過ごした。
母も大切だけれど、一番大切な自分自身の心と向き合うために。

すれ違う思惑、伝わる想い

宅配便が届いた報告とお礼を兼ねて、私から母に電話をする。
硬い口調の私に、母は心配そうな声を出す。
・・・私はむやみに心配されるのが嫌い。
だってそれは相手がちゃんと楽しく暮らしていることを
信じていないと言っているように私には感じるから。

心配ではなく、信頼をください。

いつも通りのパターンで話が始まったが、私はお腹に力を込め落ち着いて質問を投げてみた。
「どうして連絡をしてこなかったの?」
すると思いもかけない返事が返ってきた。
「きっと一人でじっくり考えていると思っていたからそっとしておいた」と。

私はてっきり、母が怒るかすねるかして、娘の決心が翻るのを願っていたに違いないと考えていた。
自分のためではなく、私のために沈黙を守ってくれていたなんて考えてもみなかった。
あの母が。それとない仄めかしや、娘を分身とでも思っているかのような強引な自説を主張する母が。

私が夏前に出していた結論を、その気持ちに変わりがないことを静かに伝えると、母は反対しなかった。
「あなたの好きにしたらいい」と言葉を返してきた。

母からのこの言葉には、二重の意味が込められている。子どもの頃からずっと。
「好きにしたらいい・・・その変わりお母さんに逆らうってこと覚えておいてね」
「好きにしたらいい・・・言うことをきかないならもう知らない!」
私は今までこの言葉に絶望し怒りながらも、あきらめの気持ちで「母が思う好きにしたらいい」ことを
選択していた。でも、もうそんなことはできない。

「好きにしたらって、逆切れして言っているの、どういう意味で言っているのか教えてちょうだい」
そう尋ねると母は、
「そのままの意味。自分がいいと思ったんだったらそれでいいという意味」と応えを返した。
二重の意味が込められていないシンプルな言葉。
この言葉を待っていた気がする。

身体をこわばらせて戦闘態勢に入っていた気持ちがすうっと晴れてくる。
私達の関係に一筋の風が通り抜けた。

どんな動機、価値観、思考の癖があろうとそんなの関係ない。
思惑が互いに違う方向を向いていても、伝わる想いは同じだから。
相手を尊重すること、信じること、愛すること。

表現が捻じれていても根底の気持ちは、少しずつ相手の心を浸食してゆく。
表現することをあきらめなければ。
受け止めることを怖れなければ。