palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

スイミングスクール再入会

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「私の泳ぎを見てほしいの」
娘はそう言い、笑顔でスポーツクラブへと駆けていった。
スイミングスクールのレッスン中は用事を済ませる時間。
薬局、スーパー、図書館などへ時間とにらめっこをしながら車を走らせる。
小学校高学年になったから、レッスンはじっと見守らなくても平気よね。
そう心に言い訳をしながら、終了時間ぎりぎりに申し訳程度、泳ぎを見学してきた。


初めてこのスイミングスクールへ入会したのは4年前。小学1年生だった。
幼稚園からスイミングを習う子ども達も多い中、小柄で慎重な娘は水を怖がり、
お友達も一緒に通うからとなだめて、やっとのことで入会ができた。
どきどき迎えた初日、娘はつま先立ちでしか足が届かないプールに、落ち着きをなくしている。
ガラス越しの見学席にまで不安げな気持ちが波のように漂い伝わってきた。
がっしりとした女性のコーチに、
「どうか娘の気持ちがほぐれるように接してください」
とお祈りしてみる。
てきぱきとレッスンを進めるコーチとはしゃぐ子ども達。
娘の口元がへの字になり表情が硬く固まるのが見える。
コーチは娘の表情に構わず明るく娘をプールの真ん中へ誘導し、急に支えの手を離した。
たぶん数秒。でも永遠の数秒。
「プールに沈んで水がいっぱい口に入って苦しかったよう」
レッスン後、車の中でも泣きながら、溺れそうになった瞬間のことを語りつづける娘。
コーチへのトラウマもできてしまい、その後まもなくスイミングスクールは退会した。


毎年夏がくるたびに、プールの授業は親子で悩みの種になった。
小学校で補修授業を受けても、なかなか泳げるようにはならない。
「泳げなくても生きていけるから」
こう語りかけるようになって、もうすっかりあきらめたのがここ1年くらい。
ある春の日、娘がお風呂の中でゴーグルとシュノーケルをつけてこう呟いた。
「私、結構水に慣れてきたんだよねー。泳げるかも」
去年の夏休みに放り込んだキャンプの川遊び体験のおかげ?友達からの刺激?
なんだっていい、もう一回挑戦するチャンスが訪れた!
いそいそとスイミングスクールへ電話をし、再入会の旨を伝える。
すんなりと初日を迎え、さりげなく壁のコーチ陣の写真をチェックすると、
あのがっしりとした女性コーチの名前はなかった。
優しそうな中年男性のコーチが娘の担当と聞き、何だか安心する。
初日なのでずっとレッスンを見守ったが、危なげな場面もなく時間はすぐに過ぎた。
親はすぐにと思うけれど、焦らずに機が熟すのを待つのが大切。
当たり前のそんなことが、なかなかわからなかった。


娘からのお願いに反省した私は、久しぶりにじっくりと娘のレッスンを見学する。
ゴーグルを額に上げた顔は、いい感じに緊張で引き締まっている。
こちらには一瞥もしないけれど、私が見ていることは知っているのがわかる。
娘の番が来てプールに吸い込まれていく。
すぐに浮上し、規則正しいクロールでどんどん遠くにいく。
息継ぎもできているし、沈んでもいない。ちゃんと泳げている。

またひとつ自信がついたね。
この瞬間に立ち会えて、喜びで胸が熱くなる。
成人するまであと9年。
娘に求められるうちは全力で応えたいし、応えられる自分でいよう。
さりげなくレッスン終了となり、見学する保護者へ向かっての子ども達からの
「がんばりました」メッセージを発表する時間となった。
小さく手をふると、娘も小さく手を振りかえす。
満面の笑みを見せなくなった所が、1年生の頃との違いを私に感じさせる。
さて、今日はおねだりされる前にアイスを買っていいよと伝えるか。