palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

贅沢な散歩

f:id:palewhite:20141010184135j:plain

アートセラピーの日

ヴォイストレーニングで知り合った女性実業家の方から、パステルアートセラピーの体験会が
あるけど行かない?とお誘いを受けたのが先週の水曜日。
「絵を描くことで無意識の内心の状況を表現することができ、それを理解し受け入れる
ことがアートセラピー」という趣旨に惹かれて、出席することに決めていた。
その後木曜日に親知らずを抜歯し、パステルアートセラピーのことが書かれたフェイスブック
開けないまま一週間が過ぎ、たしか今日がその日。
金曜日の午後1時から、場所は会議室のある喫茶店。
日付は何故か覚えていないけれど金曜日の午後1時といえば今日よ!と根拠なく思い込み、
眠たい身体をなだめながら身支度を整える。

パステル画を描くことを考えて、シャツにジーンズのタイトスカート、それに届いたときに
びっくりした、日本の靴にはなかなかない爪先の汚れ加工が激しいお気に入りのブーツを
組み合わせて出かけることにした。
空を見上げると黒い雲が薄く広がっている。向こうは雨じゃないといいのだけれど。

まさかの勘違い

時間にして1時間余りの移動で隣の県の喫茶店に着く。
道路を歩くとはっきりと判るこの街の気配。すかすかな空間、広々とした空間。
近くには丘も山も見当たらず、平らな平野がずっと続く見晴らしの良さ。そこに見覚えのある
全国展開のチェーン店の鮮やかな赤や青の色彩が挟まれている。
不思議と殺伐とした環境にはならず、いっそさっぱりと感じさせる印象。

喫茶店は、横長の子どもの頃にあったドライブインといった趣で懐かしさを誘われる。
駐車スペースがほぼ満員で、客層はシニアからサラリーマンと見事にバラバラ。
古風な自動ドアを通り受付の女性の方にパステルアートの開催場所を尋ねる。
「あの今日こちらでパステルアートセラピーがあると思うのですけど、場所はどちらでしょうか?」
女性はあれっという顔をして下を向き書類を確かめられている。
「あのー・・健康づくりの集いはあるんですけれど、パステルはないですね。」
私は意外な返答に「????」素早く記憶を手繰り寄せるが反応できない。

・・・おかしいな。何かがおかしい。直接電話をかけて確認しよう。

心配そうに見つめる女性に確認してみますと言い、古風な自動ドアを逆戻りしスマホを掴む。
有り難いことにすぐに電話にでてくださる、良かった。

「あの○○(私)ですけれど、とつぜんごめんなさい。今お電話よろしいですか?」
経緯を説明すると少し興奮した高めの声がスマホ越しに響いてきた。
「○○さん、パステルアートセラピーは、11月7日の金曜日よ!」

「ええーっ!!」
「金曜日、1時、場所も合ってるけれど、来月、来月よ!」
「11月、どうして今日だと思ったんだろう。ありえない間違い!」
おかしくて二人でしばらく笑いがとまらない。
「場所も、時間も合ってたのにねぇ・・せっかく来てくれたのに。」
「いえいえ、たまたま確認せずに来た私がとぼけているんです、しかしこんな間違いって・・・」
「ありえないよね~。」
また笑い合ってしまう。女性実業家の方は気の毒がって2時以降なら時間が空くから水墨画美術館でも行く?と
誘ってくださる。水墨画は見たい!と思ったが、今日は生憎子どもの下校の都合で長居はできない。
2時以降現在地である喫茶店(女性実業家の方のお店だった)でお茶をすることになった。

1時間の空白

さてどうしよう。
この場所に居続けるのもなんだし久しぶりに歩いてみようと、秋晴れの空の下、街の中心地目指して歩き出す。
びゅんびゅん横を通り過ぎる車の他には通行人は私一人。典型的な地方都市郊外の風景。
道路と車しか見るものがないのは辛いなと感じ始めた頃、右前方に緑の木立と小道の空間が現れた。
「△△近代美術館・□□科学館」
嬉しい、やっぱりついている。
ちょうど横断歩道も青信号。道路を渡るとコンクリートから土と緑の木々に小道のある空間にトリップできる。
私は早くたどり着きたくて、一直線に横断歩道を突き進む。

散歩に最適の空間

横断歩道を渡り小道を進むと、小さな森の空間が現れた。
緑の間から光る太陽。ゆるやかにカーブする小道を進むか、それとも草原を踏みながら進むか嬉しく迷いながら
白樺のような木肌の木にずんずんと近づいていく。

今日はこのためにブーツを履いてきたんだわ。

自分の中で腑に落ちた。足元を気にせず、心のままに木に近付いたり遠のいたり気ままに歩きながら先に進む。
すると美術館と科学館を左右に、コンパスで描いたような円形の芝生の広場にでた。

・・・私は何でここにいるのでしょう?

・・それは久しぶりの散歩をするためです。

何も思い煩うことなく、ただ太陽の光を浴びて、芝生を感じて、樹木の中で休息するためにいる。
誰もいないこの芝生広場は、今だけは私のもの。

Spend more time outdoors.

つい忘れがちな私の大切な時間。
こういう瞬間が好き。時間から解放され、自然に包まれて心が澄んで無になる瞬間の積み重ね。
栞のようにこんな時間を日常に挟んだら、日々のルーティンワークもかけがえのないものになるのかも。
この自由をもっと味わいたくて、日傘も帽子も持たずに来たのに日盛りの芝生広場を散策する。
そう、これは小さな冒険だ。だってもう肌が火照ってきてるから、日焼けをものともしない果敢な挑戦。

たっぷりと散歩を楽しみ、待ち合わせ場所へと向かう。
先に到着していた女性実業家の方が手招きをしてくださる。
微笑みあい、時間がもったいなくて話し始める私たち。
何も注文をしていないことに気が付き、またまた笑いあう。

何を注文するか、メニューを見てひらめいた。
火照った身体をひんやりさせるチョコレートパフェ。
普段は絶対に注文しないけれど、先ほどの散歩を喜ぶ心の中の子どものために、今日はこれ。