palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

横山やすしのような、白スーツを着た担任

今週のお題「思い出の先生」

今週のお題を見て、すぐにひらめいた。

もう30年以上前の中学時代の担任の先生。通称「ふじきん」。

「ふじきん」というあだ名は、先生のお名前からついたのか、

覚えてはいない。

先生の本名は忘れてしまったけれど、私が高校に入った春の

小さな出来事はしっかり覚えている。


部活が終わり、たまたま一人で校門を出て歩いていると、

白い乗用車が停まった。

セドリックとかクラウンとか、そんな感じの国産車

音もなくすぅーっと私の横に速度を下げて近づき、

スモークガラス?車内が見えなくなった色のついた窓が

気が付いたら下がっていて、そこにはふじきんの顔があった。

浅黒い顔に細身の身体は上下まばゆい白、白いスーツに包まれている。

咄嗟に、連れ去られると学生鞄を意味もなくお腹の辺りに抱えて

防御の体制をとっていた私は、びっくりしたのと不審な人物ではないと

わかった安心と、久しぶりに先生に会えた意外さに口を聞けなかった。

ニヤリと頬をゆがめる笑いを浮かべたふじきんは、

「警戒しただろう。襲われると思ったか?」と

からかって楽しんでいた。

何て言葉を自分が返したかは覚えていない。


・・・今母親になって思うけれど、ふじきんの会話はあぶない。

中学校の担任と教え子の会話にしては、ブラックジョーク満載。

ではふじきんは、セクハラ先生だったかといえばそうではなく、

生徒をしっかり受け止めてくれる、優秀な心温かい教師だった。


ただ先生は、突き抜けていた。

私達組の全員に、修学旅行か何かで遊園地の乗り物をおごってくれたことがあった。

たぶん、全員のきゃあきゃあ騒ぐ姿を見たかったからだと思う。

けっこう怖い乗り物で、実際死者も出ていたと後から聞いた。

その乗り物に組の生徒を乗せて、

「死ぬかと思ったか?」

と反応を楽しんでいた。

そのときに写した写真には、白スーツに、口にはチュッパチャップスをほおばり

ピースをしているふじきんの姿が残っている。


白は汚れやすいのに、なぜ白スーツを着用していたのだろう。

その筋の方に何度も間違われていたのに、不思議だ。

私はあれから真っ白なスーツを着用している教師に出逢ったことがない。

その後中学の同窓会に出そびれ、ふじきんとの再会は果たせていない。

だから白スーツのなぞは永遠になぞかもしれない。

ふじきんから、私は「ニヒル」という単語の意味を学習した。


その日、ふじきんは家まで車で送ってくれたが、何を話したかは、

さっぱり覚えていない。