palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

独身に戻り、初めて買ったもの

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自分のための密かな愉しみ


怒涛の12月。クリスマスに離婚が成立し、気がつくと小学校の冬休み。
2014年はあと僅か数日でおしまい。
娘を実家へ送り出し、やっと私にもお休みがきた。

就職用のスーツやシャツは購入したけれど、大好きな本の衝動買いは別として、
自分のためのモノをずいぶん長い間買うことがなかった。
結婚生活と、一時的に母親業から解き放たれて、身体が軽い。
真っ直ぐに自宅に戻るつもりが、駅に隣接するファッションビルに吸い込まれていく。

欲しいのは、でも洋服じゃなくて。
今まで忘れていた自分らしさを表すモノ。今日は見つかる気がする。

1年くらい前にこのビルに入ったセレクトショップ
いつみても好きな傾向の洋服や小物が置いてある。
何度も来ているので勝手知ったるお店を手前、奥と気ままに進みながら、
ガラス瓶の並ぶ空間に呼び止められて立ち止まる。
そこはアールヌーヴォーを連想させるような黒を基調としたシックな空間。
小さな60㎝四方のテーブルの上でガラス瓶達が華やいだ空気を発している。
香水やルームフレグランスにキャンドル。早速テスターの香水を試す。
その瞬間、新年への期待にざわつく店内から一瞬で異次元にトリップする。

・・・こうするために今日はこのお店に来たのだわ、と一人合点する。
たくさんの魅力的な香りに夢中になっていると、先ほどから視界に入っていた
ボブと呼んでいい髪型に大きな目が美しい男性の店員さんが声をかけてきた。
「こちらはパリの香水のお店の商品になります・・・」

パリにはやはりご縁がある。そう思いながら感じの良い店員さんの言葉に耳を傾ける。
「・・僕はこの香りが好きなんですが、東京のルイ・ヴィトン××店で使われています。
あとこちらも癖があるけれどいいですよ・・・」
自分の好きな香りの話を生き生きと語る店員さんはお洒落なのに気取らず、若いのに心優しい。
彼の語り口の好ましい熱心さに、さっきから気になっていた疑問を尋ねてみた。
「ご出身はどちらですか?」
「えっ、訛ってます?僕は○○市なんですよ。」と少し慌て気味な様子がほほえましい。
「いいえ、そうじゃなくて東京からいらしたのかと思いました。」
あなたが洗練されているから・・という言葉は店員さんには発せず心で呟いた。

娘が生まれてから香水をつけるのは止めたこと、ハーブやアロマオイルの香りでさえ、
その場からタタタと走り去る娘を持つため香りを身につけるのはあきらめていたこと、
でももう一度香水をつけたい気分になったことを自然と話していた。
すると店員さんは、
「それなら彼女の方が詳しいから呼んできますね。」
と女性の店員さんを手招きして、自分はそっと売り場に戻っていった。

手短に先ほど話したことを言うと、この店員さんも楽しそうに自分のおススメの香りを
紹介してくれる。それは個性的な香りで、久しぶりに香水をつけるのならば、ローズは
どうだろうと提案してくださった。
「そうですね、ローズもいいんですが、自分としてはゼラニウムが気になります。」
「それならゼラニウムに呼ばれているってことですよね!これ今年2014年の新商品
なんですよ。あっでも、もう終わるけどー。」
あはははと大きく笑う店員さんは、耳にかかる部分の髪をオレンジのメッシュにしている。
しばらく2人で香水談義に盛り上がる。
「・・私は変わっているってよく言われるんですけど。・・・・ゼラニウム、こちらの商品なら
ロールオンタイプだから、ほんのり香る程度ですよ。お仕事終わった後のリフレッシュなんかにも
いいかもしれないです・・・。」
変わったヒトは大好きです♪好きなものは好きといい、素直に元気に生きる人は特に。

少し前から香水を探していたけれど、納得のいかないまま先走って購入しなくて良かった。
この香り、この雰囲気。私が求めていたものだ。
そして気持ちの良い店員さんたちと好きなモノをわかちあえて、すごく楽しい。
「こちらを頂きます。」
気持ちの良いお買いものができて、店内の暖房のせいだけではなく頬が熱くなる。

「ありがとうございます、気に入ってもらえて嬉しいです。」
気が付くと先ほどの男性店員さんが後ろで洋服をたたみながら、にこにことされていた。
こういう店員さんたちを雇うオーナーの方はどのような人物なのだろうと想像しながら、
今度は洋服を見にこようと店内を後にする。

早く香りを身に纏いたい。

自宅で開封した香りを耳の後ろにつけてみる。
仄かな香り。至近距離に近づかない限り本人しか気が付かないはず。
これならば、香り嫌悪の娘にも迷惑にならないし大丈夫。

その日以来、朝起きた時と寝る前に香りをかかさずつけることが新しい日課に加わった。
香りを身に纏うと気分が上がる。
今度パリに行ったらこの香水以外の香りを本店で試してみよう。

香りの次は何?
クレイン社のレターセットを買って、蝋のシーリングで封をして手紙を出そう。
現在の私の状況や相手へのメッセージを、大切な人たちに伝えたい。
メールでもできるけれど、手紙を書きたい。
銀座の文房具店伊東屋にはずいぶんといっていない。
銀座は好きな街。親しい人達が今は東京に集合している。
2015年は東京で友達と再会しよう。

私は誰?
私はもう妻ではなくて、従順な娘でもない。
母親で、女性で、ひとりの自由な魂をもつ私。

香りは過ぎし日の記憶を甦らせる。
この新しい香りと共に、振り返ると輝く瞬間の記憶を重ねていこう。

 Happy New Year☆