palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

光のスタンプラリー

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街のライトアップ

10年前からこの街では、中心市街地を元気づけようと、あかりオブジェで街中心部を演出しているらしい。
月を見る小道という題名に相応しい黒いパンフレットにはこう書かれてあった。

たまたま偶然、夕方の百貨店に居合わせた娘と私。
ドーナツを食べたいと娘にねだられ、ミスタードーナツをめざし百貨店の外へ出ると、そこには光で照らされる
予定のあかりオブジェたちが、真っ暗な闇の訪れを待って白くぼんやりと浮かび上がっていた。
どんどん墨色から漆黒になる夜空の下で、ひとつ、またひとつと花が咲くように点灯してゆくあかりオブジェ。
今からこのまま右にターンしてバス乗り場に向かえれば、予定通り1日が終わる。
でもオブジェの綺麗さに、娘と私は素通りはできなかった。

あかりオブジェに参加する

百貨店以外に近くの観光名所数か所にも、星のテントや流れ星、花あかり、波あかりと名付けられた
あかりオブジェたちが設置されている。
クリスマスの季節に光が街に溢れるのは全国共通の風景だと思う。
けれど月見の季節にライトアップされた光が街で見られるのは、この街の心意気だ。

偶然居合わせた観光客の方達が喜んでシャッターを切られるのを見ながら、娘と自分も撮影に入る。
良いアングルを探しながらうろうろしている私たち。すると教壇のようなものにパソコン?らしき機械を置き、
その後ろにやや緊張して佇む青年を発見した。
教壇風のものは青色に光っているが、彼はオブジェではないだろうし、何かの案内係?

「あのー、これは何ですか?」娘が青年に尋ねている。

青年は目を合わせずに小さめの声で、でも丁寧にあかりオブジェの催しを説明してくれ、自分は
光のスタンプラリーチェックポイントに立っているのだと教えてくれた。
娘がすぐにスタンプラリーという単語に食いつく。
「スタンプラリー大好きー。したい、したいなー♪」

私はスタンプラリーは好きでも嫌いでもないけれど光のスタンプラリーという発想が気に入り、
珍しく娘の言葉に即答で同意して、私たちは光のスタンプラリーをすることにした。

あかりオブジェ「流れ星」を手にスタンプラリー

スタート地点でぼんぼりや提灯の代わりに和紙でできたあかりオブジェ「流れ星(ICチップ内蔵)」を渡され、
5か所のチェックポイントをまわるラリーが始まった。
手元に揺れるあかりを持って歩くのは、特別な気分。

今年6月にも子供会で本物の和紙でできた提灯にろうそくを立てて歩いたのだが、今日のような落ち着いた気分ではなかった。
何人もの子ども達が提灯に引火させ炎が出現して、その度に消火活動があり風情を感じる暇がなかったから。
あの時とは違い、今日の光は熱くもなく、燃えないし、安全だ、俄然心にゆとりがある。
ただし、ICチップを破損しないよう取り扱いは優しくしなければならない。
私たちは小学生女子が気取ってそっとハンドバッグを腕にかけるように「流れ星」を下げ、光をめぐる小さな旅にでた。

「流れ星」の色が赤から青、ピンク、黄と変化するのを眺めながら、のんびりあかりオブジェを撮影したり
眺めながら、チェックポイントを通過する。
バーコードのような機械で「流れ星」を読み取り反応させるのが、スタンプの代わり。
4か所目のチェツクポイントはさっき娘が質問した青年がその場所を守っており、再びやってきた私たちに
今度は目を合わせて、でもやはり小さ目な声でねぎらいの言葉をかけてくれる。
5か所目最終チェックポイントも無事通過し、光のスタンプラリーは終了した。

光のスタンプラリーは、生まれて初めて。
歩くのが面倒かしらと思ったけれど、飛び石にジャンプするように光を見つけながら移動するのは面白かった。
口の中で軽く溶けてしまうメレンゲのような時間だったけれど、その軽さがいい。
美しく幻想的なあかりオブジェを見られたから、明日からの日常へ戻る気持ちが軽い。
たぶん美しさは人にパワーをわけてくれる。
娘と私はつないだ手をリズミカルに振りながら、足取り軽くバス停へと歩いていく。