palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

無彩色の世界との決別

f:id:palewhite:20140817234455j:plain
少し前まで私は白黒の、無彩色の世界に住んでいた。
女性と子ども、老人、そしてそれ以外の人々が住む世界。
そこは男性が存在しない世界。

もちろん現実世界では性別が男性である人々との接点はある。
「ガソリンスタンドのお兄さん」「職場の上司」「娘のスイミングのコーチ」など。
彼らは役割をまとって登場し、私も「お客」「部下」「保護者」という役割のもとに
安心して彼らと接していた。ときたま意識に留まる男性が現れても、美しい花や絵画を
鑑賞するような気持ちでしか見ることはなかった。
私の心は無彩色の世界に属していたので、そこには男性は存在しないのだ。

無彩色の世界は優しく安全で、「母親」という役割を胸に抱えて生きる私には、
男性はいなくても平気だった。そう信じていた。


ある日、白黒の無彩色の世界がとうとう真っ暗になった。
元の安全な無彩色の世界に戻って。
そう願っても暗闇が支配する空間は変わらない。
一筋の光が漏れるのが見える。そこにはドアがあった。
ドアの外には希望がある。
絶望という名の無彩色の世界の住人である私には、それがわかっていた。

慣れ親しんだこの世界を出て、色彩のある世界へ自分を連れて行こうか。
それはもう一度、男性と向き合う覚悟を決めるということ。
以前見た「トゥルーマンショー」という映画。
偽物の作られた世界に暮らしていた主人公が、そこから脱出する物語。
その主人公に自分を重ねる。


思い切ってドアを開けると、それは思いのほか軽かった。
前方の眩しい光に目がまだ慣れない。
ドアを片手で持ちながら、今までいた世界へ向き皆と抱擁を交わす。
ありがとう、さようなら。
私を守ってくれた世界へ感謝を込めてそっとドアを閉め、深呼吸して胸をはり、
くるりと身体を前に向けた。
白黒から極彩色へ世界が切り替わる。
さあ、懐かしくて新しいこの世界へ踏み出そう。