palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

ロシア人男の子と、今年最初の雪遊び

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旅先での今年初めての大雪

流れを変えて、心機一転!のために旅行を計画していたが、
新しい仕事での力不足を痛感し、家で仕事をしていた週末。
でもその合間に、海外旅行の代わりに、近場へ一泊だけしてきた。
旅ともいえない、ごく僅かな移動。

3つの英文記事を「簡単に要約してほしい」との教授の依頼に、
方向性が異なる文章の、どこを削り何を採用するかに迷いに迷った私。
当然勤務時間には終わらず、旅先にも仕事を持ち込むことになった。
それでいい、こうすることを決めたのは自分自身だから。

でもせっかくのお休み。独りになれる機会を逃すのは惜しい。
そう思い、仕事も自分の時間も両方詰め込んだ週末の時間を作った。

旅先が近いってすごく便利。スーツケースもいらないし、お金の両替もない。
持ち帰った仕事の資料を鞄に入れていても、心も身体も身軽。
公園が好きだから、散歩を楽しめるように公園の近くのホテルに宿泊した。
今回の旅の目的は、運河のある公園を気儘に好きなだけ散策すること。

予定では、冬枯れの広々とした運河周辺を好きなだけ歩き回るはずだったけれど・・・
この週末は全国的に大雪となった。

雪を軽く見ていた私は、積雪量の多い地方では必需品の長靴(レインブーツではない、
もっと実用的な感じが長靴なのだ)も履かず、呑気にブーツで列車に乗ってしまう。
この段階では、雪はちらほら。けれど、油断はできない。

大雪だと困ると考えながらも、列車の座席に座ると、そんなことをすっかり忘れてしまう。
ほんの数十分でも、特急列車に乗ると気持ちが切り替わる。
何にも所属せず、何の役割も背負っていない、只の私に切り替わる瞬間が好きだ。
重力がなくなったかのように、何かが変化し、列車の動き出すスピードに
シンクロして気持ちが弾んでくる。
だから、旅が好き。たとえ旅とは呼べないくらいの小さな旅であっても。

列車の暖房にぼうっとしながらホームへ降り駅を出ると、そこには冷たい風と
とめどなく降ってくる雪が視界を遮る、素っ気ない表情の街が広がっていた。

無事にホテルに着き、散歩を決行

今年初めての雪で、おまけに大雪。このタイミングにわざわざ雪まみれに
散歩のためにこの地に来た私って・・。
自分で気分転換したいと決めたから、そうしたかったんだよね、
しかし何もこんな日に旅行しなくてもいいんじゃない、
自分の中でいろんな気持ちが交錯して面白いなあと思いながら、足元に積もる雪をよけ、
水たまりと化した横断歩道の端っこの一番水が少ない場所を探して飛び越えながら
さくさくと歩いていく。まだブーツは大丈夫。

「何がなんでも旅行に行くの!」
と頬を膨らませて主張する小さな女の子のような自分の気持ちに任せてみたら、大雪の
最中に散歩することになった。自分の馬鹿げた行動にうけてしまう。
案の定、普段は観光客やカップルでにぎわう運河のある公園は、全く人気がなかった。
私が目にするのは、12月にあわせたイルミネーション、白、金色、赤、青、それに薄墨色の世界。
運河の水面は、よくわからない。水の気配だけを感じる。
幻想的な光景。その中に、ポツンと私がいる。真っ白で水平に広がる空間は、すごく心を解放してくれる。
静寂を、深呼吸するみたいに深く吸い込んで、貴重な一人きりの瞬間を楽しむ。
そして足跡の見当たらない運河の上の橋を、私だけの足跡をつける独り占め感を満喫しながら
ずんずんと進んでいく。

寒さに降参し、スターバックスで暖をとる

散歩は楽しい。でも寒すぎるのには困ってしまう。
2008年に世界一美しいと称されたスターバックスがこの公園にはある。
少し休憩しよう。そして要約の宿題もしよう。
雪の中、灯台のように見えるお店を目指して足を早める。

暖かい空気とコーヒーの香りがすごく有り難い。
店内は大雪にも関わらず若者が結構いる。
男女、男同士、女同士、皆可愛らしいなあ、この客層の若さはこの店の特徴?
とりとめもなく考えながら、英単語を目で追いながらも筒抜けに聞こえてくる会話に
思わず聞き入ってしまう。

「クリスマスは2人のうち、どっちと過ごすの?」
「ていうか、そんなんじゃなくて、どっちも彼氏じゃないよ。」
尋ねる方も答える方も、ごく普通の女の子。
どちらの言葉にも、嫉妬や妬みのような女子同士の面倒な気持ちがこもっていなくて
いいなーと思う。
「俺らはゲイではありませんから。」
と写真を撮ってくれる店員さんに一生懸命説明しながら仲良くポーズを取る男の子2人組。
他にもトラッドな洋服の似合う華奢な男の子と、髪をリボンで結びふんわりしたスカートを
はいてちょこんと座る女の子のカップルなど店内の人々を見て。
素朴な愛情というか何だかほのぼのした気持ちが空気のように存在するお店が好ましい。
恋人同士や、友達同士、ずっと幸せでいてねと祈るような気持ちが湧いてきて、満足し
心も身体も暖まり、ホテルに戻るために、もう一度雪の世界へ帰っていく。

突然渡された雪玉「はい、プレゼント」

ホテルに戻る前に、この綺麗な景色をもう少し撮りたいとスターバックスの外でスマホ
構えていたら、何かの気配がして、いきなり目の前に雪玉が差し出された。
「はい、プレゼント。」
「サンキュー。」と言ってから、この子は日本語を話していたと気付く。

ラファエロの描くバラ色の頬の天使にそっくりな、ちいさな男の子。
金髪に青い目、ネイヴィーブルーのPコートらしきものをはおり、全身が紺色で統一されている。
手には黄色い、アイスクリームをすくうスクープ?を2つ合体させたようなおもちゃがある。
「ありがとう。すごいきれいな雪玉だねえー。」
男の子は満足そうに次々と雪玉を渡してくれる。撮影は中止。
雪玉を持ちきれないから投げることにする。
「けっこう飛んだよ、ほらー。」
と男の子に言うと、彼も真似をして雪玉を投げる。
良く知らない子どもに雪玉をぶつけるのは・・・と思い誰もいない運河の側に向けて投げたら、
彼もそちらへ投げる。と思ったら、おもむろに場所を変え、
「来て!」
と大人は自分の言うことを必ず聞いてくれるという絶対の信頼感のある声で私を呼ぶ。
「何かなー?」
と近寄ると、雪をかきわけ茶色い地面がでている。これを見せたかったのだろう。
「・・・すごいねえー、力持ちだねえ!」
白い雪の間に水玉模様のように見える茶色い土。何のためにこんなことをするのか意味不明。
娘はこういう遊び方をしなかったなあと考えながら、男の子の嬉々とした様子に微笑んでしまう。
「お名前はなんて言うんですか?」
「レオ。」
「レオくんは何歳かな?」
「6歳。」
日本語が上手い。
しばらく二人で遊んでいたら、レオ君のお母さんとお父さんがコーヒーを持ってやってきた。
「こんばんは。」と挨拶を交わし、そろそろホテルに戻ろうとその場を去る。
振り返ると、レオ君は家族3人で雪の中雪遊びを続けていた。
大きい子ども達と、6歳の子供がはしゃいでいる。
雪は童心にヒトを還らせるなあと実感しながら、ますますひどくなる雪の中、ホテルへ戻った。

いつか好きなヒトに「えいっ。」と雪玉を投げるという夢はまだかなっていないけれど、
ロシア人の男の子と雪玉は投げられた。
心の引出しにこの記憶をそうっとしまい、普段の日々へと戻っていく。
冬の冷たい空気が気持ちいいように、一人でいることは孤独も含めて心地良い。