palewhite’s diary

心模様は、日々さまざま。

バラ園にて

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昼下がりのバラ園

切り花の薔薇では物足りなくなり、バラ園に薔薇を見に行く。
夏前に訪れた頃は様々な品種が競うように勢いよく花開き、バラ園は濃厚な香りに満ちていた。
秋のバラ園は、ところどころ薔薇と薔薇の間に空間が空いていて盛りの時期の勢いはない。
そのかわりに落ち着いた佇まいと、時折風に乗り運ばれる微かな薔薇の香りが、
静かに訪問者を受け入れてくれる。

お気に入りの品種は残念ながら蕾をつけておらず、いつもの深く朽ちた紅茶色の薔薇は
見ることがかなわなかったけれど、さまざまな薔薇と挨拶を交わすように、ゆっくりと
園内を移動する。
薔薇は初夏の前が一番綺麗と自分の中ではそういう印象があったけれど、秋の薔薇もいい。

離婚に向けての話し合い

娘あての児童手当が入ったから、私の口座に振り込んでおいたよと夫から電話が入った。
振り込みをしてくれたことと、その連絡をしてくれたことに「ありがとう」とお礼を言い、
離婚の打ち合わせの日取りを決める。

彼の声は明るい声だった。私たちが付き合っていた頃と、子どもが生まれる前まで聞いていた彼の声。
そのことが嬉しい。良かった。神様ありがとうございます。
これからも貴方らしく、もう日陰ではなく明るい方向を向いて生きていって。
向日葵のようにも、薔薇のようにもならなくていいから、本来の貴方らしく、そう今の調子で。

別れを前に、自分が向き合ってきた相手が誠実な男性であると確信できることに感謝する。
「自分を大切に、時間がもったいない」と私の結婚生活を案じて忠告してくれた友人もいたけれど、
私の場合は今が離婚に最適な時なのだと思う。
違和感を感じたらすぐに配偶者と別離する選択を選ぶ人もいるだろう。
ろうそくが燃え尽きるのを待つように、愛情が消えてしまうまで10年も逡巡する時間を過ごした私。
しごく効率が悪いとは思うけれど、一人の男性と真剣に向き合い、自分の結婚の誓いを貫くことをやりきれた。
だからこそ、躊躇なく新しい人生の扉を開けることができる。

バラ園をあとに

薔薇の花たちに心の中でお礼を言い、秋のバラ園を背中に駐車場へと歩き出す。
目の前の公園は太陽の光を反射して、芝生も樹木もキラキラと輝いている。
思ったよりもまだ日が高く、陰ってはいない。

秋の薔薇が美しいように、人生の秋も、この瞬間、軽やかで美しさに満ちている。